静岡県の住宅価格を調べてみた
FIRE移住研究 第21回

静岡県の住宅価格を調べてみた
— シリーズ初、統計的に有意な「値下がり県」—

第21回は静岡県です。マンションは浜松市中央区・熱海市など21自治体のみとやや薄く、浜松市も2024年の区割り再編で3区のみとなったため、戸建て(対象39自治体)でランキングします。東海道メガロポリスの中部を占める、愛知に次ぐ中部の主要県です。

本記事は不動産情報ライブラリ(国土交通省)の公開データに基づく試算であり、投資助言や特定物件の推奨ではありません。想定条件を変えると結果は変わります。

結論

静岡市の中心・葵区が、浜松市中央区を+30.6%上回るという結果になりました。三島市(+20.8%)・静岡市駿河区(+18.5%)も続きます。一方で県全体の価格推移を見ると、2007年から2026年にかけて統計的に有意な下落(-7.3%)を記録しており、これまで見た20都道府県の中で唯一、はっきりとした「値下がり」が確認できた県でした。県内価格差は葵区と榛原郡川根本町で6.6倍です。

静岡県 市区町村別 価格ランキング(戸建て)

同じ延床面積・土地面積・築年数の物件で揃えて比較した場合の、市区町村ごとの価格差です(直近10年・29,269件の実取引データを回帰分析しました。基準=浜松市中央区)。

-80% -60% -40% -20% 0% +20% 静岡市葵区 +30.6% n=1,886 三島市 +20.8% n=788 静岡市駿河区 +18.5% n=1,683 浜松市中央区(基準) 0.0% n=4,648 静岡市清水区 -7.9% n=1,572 沼津市 -15.6% n=1,478 富士市 -20.6% n=1,855 焼津市 -30.0% n=1,102 伊東市 -44.8% n=2,143 榛原郡川根本町 -80.2% n=18
基準より高い(統計的に有意) 基準より安い(統計的に有意)
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順位市区町村価格水準n
1静岡市葵区+30.6%1886
2駿東郡長泉町+26.2%295
3三島市+20.8%788
4静岡市駿河区+18.5%1683
5駿東郡清水町+3.4%(n.s.)289
6浜松市中央区(基準)0.0%4648
7御殿場市-4.2%(n.s.)480
8静岡市清水区-7.9%1572
9藤枝市-10.1%1022
10沼津市-15.6%1478
11浜松市浜名区-19.3%1093
12富士市-20.6%1855
13湖西市-24.8%356
14裾野市-25.2%577
15磐田市-25.9%1211
16島田市-26.1%482
17袋井市-27.5%663
18焼津市-30.0%1102
19富士宮市-30.6%1067
20掛川市-32.8%720
21駿東郡小山町-34.3%92
22熱海市-38.4%507
23菊川市-41.1%258
24伊東市-44.8%2143
25榛原郡吉田町-45.0%144
26下田市-46.3%237
27田方郡函南町-50.1%727
28伊豆の国市-50.8%495
29周智郡森町-58.0%83
30賀茂郡松崎町-61.5%38
31牧之原市-62.3%202
32賀茂郡南伊豆町-62.9%91
33賀茂郡河津町-62.9%52
34浜松市天竜区-63.5%166
35御前崎市-65.3%93
36伊豆市-67.3%357
37賀茂郡東伊豆町-67.9%242
38賀茂郡西伊豆町-75.9%57
39榛原郡川根本町-80.2%18

駿東郡清水町・御殿場市のみ浜松市中央区との価格差が統計的に有意ではありません(n.s.)。それ以外はすべてp<0.05以下で有意です。

具体的に「延床120m²・土地200m²・築15年」で試算すると:

静岡市葵区
約4,106万円
浜松市中央区
約3,143万円
榛原郡川根本町
約621万円

葵区と川根本町を比べると、同じ広さの家で6.6倍の価格差がつきます。

静岡県全体の価格推移:19年で唯一の「値下がり県」

同じ条件の物件なら何年にどれだけの価格だったかを指数化しました(2007年=100、県全体・戸建て)。

70 80 90 100 110 2007 2010 2013 2016 2019 2022 2026 100 83.0 92.7
2011年以降ほぼ全期間で統計的に有意な下落

2007年を100とすると、2008年に一瞬101.6まで上がった後は一貫して下落基調が続き、2020年には83.0(19年間で最も低い水準)まで落ち込みました。その後緩やかに持ち直したものの、2026年時点でも92.7(-7.3%)にとどまっており、19年前の水準を回復できていません。この2026年の値は統計的にも有意な下落(p<0.01)で、これまで見てきた20都道府県の中で唯一、はっきりとした「値下がり」が確認できた県です(奈良県は「有意な値上がりなし」でしたが、静岡県は一歩進んで「有意な値下がり」という結果でした)。

データから分かったこと

静岡市葵区が浜松市中央区を上回ったのは、静岡県内での「二眼レフ構造」を反映していると考えられます。静岡県は県庁所在地の静岡市と、政令指定都市としては人口の多い浜松市という2つの中心を持つ県です。県庁・裁判所などの行政機能が集積する葵区(静岡市の中心)が、商工業都市としての性格が強い浜松市の中心を上回るという結果は、興味深い対比と言えます。

19年間の価格下落は、これまでのシリーズを通じて初めての明確なパターンでした。東京・大阪・名古屋・埼玉・千葉のような大都市圏はいずれも19年で1.1倍〜2.4倍の上昇を記録している一方、静岡県は戸建て市場全体として値下がりが続いています。人口減少・製造業の構造変化などが背景にある可能性があります。

県内価格差は6.6倍で、シリーズの中では中位の水準でした。伊豆半島南部の町村部が下位に集中しており、温泉地として知られる熱海市・伊東市も、住宅価格としては中位から下位にとどまっています。

FIRE目線で一言

POINT

静岡県は19年間、住宅価格が実質的に値下がりしてきた市場であり、これから購入・移住を検討する場合は「資産性」よりも「暮らしやすさ・住宅費の手頃さ」を重視する選択がフィットしそうです。伊豆半島南部・県西部など、選択肢の幅も広い県です。

東海道メガロポリスの中で東京・名古屋の両方にアクセスしやすい立地でありながら、住宅価格の上昇圧力を受けていない点は、このシリーズの中でも異色の結果でした。

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この記事のデータについて
国土交通省「不動産情報ライブラリ」の実取引データのうち、戸建て(宅地(土地と建物))取引を対象に、延床面積・土地面積・築年数・取引時期などの条件を揃えたうえで統計的に推定しています。市区町村別ランキングは直近10年(2016年〜2026年、29,269件)を直近重視の重み付きで、価格推移は2007年以降19年分(47,663件)を重み付けなしで、それぞれ別の回帰モデルで算出しました(決定係数R²はそれぞれ0.56、0.55)。静岡市・浜松市は区単位でデータが記録されているため、区を1つの単位としてランキングしています。

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