熊本県の住宅価格を調べてみた
FIRE移住研究 第7回

熊本県の住宅価格を調べてみた
— 半導体工場の町・菊陽町が僅差の2位 —

第7回は熊本県です。大分・宮崎・鹿児島と同じく、マンション取引の97.6%が熊本市(5区合計)に集中しているため、ランキングは戸建てで見ていきます。今回の目玉は、熊本市中央区に僅差で続く菊池郡菊陽町です。TSMC(台湾積体電路製造)の熊本工場が立地することで近年注目を集めているエリアで、実際にデータにもその存在感がはっきり表れていました。

本記事は不動産情報ライブラリ(国土交通省)の公開データに基づく試算であり、投資助言や特定物件の推奨ではありません。想定条件を変えると結果は変わります。

結論

熊本市中央区が最も高く、半導体大手TSMCの工場が立地する菊池郡菊陽町が僅差の2位につけました。最も安い球磨郡多良木町とは9.0倍もの価格差で、これまでのシリーズで最大です。また価格推移で見ると、熊本市の中古マンション価格は19年でほぼ倍増(+111.7%)しており、これもシリーズ屈指の伸びでした。

熊本県 市区町村別 価格ランキング(戸建て)

同じ延床面積・土地面積・築年数の物件で揃えて比較した場合の、市区町村ごとの価格差です(直近10年・8,808件の実取引データを回帰分析しました。基準=熊本市中央区)。

-80% -60% -40% -20% 0% 熊本市中央区(基準) 0.0% n=800 菊池郡菊陽町 -20.3% n=300 熊本市東区 -23.8% n=1,209 熊本市北区 -38.9% n=1,047 上益城郡嘉島町 -43.2% n=48 上益城郡御船町 -62.8% n=66 八代市 -68.7% n=521 人吉市 -73.3% n=169 天草市 -76.8% n=233 多良木町 -88.9% n=21
熊本市中央区より安い(統計的に有意、すべてp<0.001)
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順位市区町村価格水準n
1熊本市中央区(基準)0.0%800
2菊池郡菊陽町-20.3%300
3熊本市東区-23.8%1,209
4合志市-30.7%555
5上益城郡益城町-38.6%201
6熊本市北区-38.9%1,047
7菊池郡大津町-39.3%193
8熊本市南区-42.7%772
9上益城郡嘉島町-43.2%48
10熊本市西区-46.4%534
11阿蘇郡西原村-55.7%24
12宇土市-62.3%148
13上益城郡御船町-62.8%66
14菊池市-67.1%233
15宇城市-67.9%205
16荒尾市-68.6%240
17八代市-68.7%521
18水俣市-70.5%87
19玉名郡玉東町-70.7%19
20玉名市-70.9%216
21人吉市-73.3%169
22山鹿市-73.7%213
23葦北郡芦北町-74.5%39
24上益城郡甲佐町-74.9%40
25阿蘇市-75.1%102
26玉名郡長洲町-75.2%70
27八代郡氷川町-75.2%19
28阿蘇郡南小国町-75.6%35
29天草市-76.8%233
30球磨郡錦町-77.8%40
31玉名郡南関町-79.3%22
32玉名郡和水町-80.1%20
33その他(小規模自治体)-82.3%76
34阿蘇郡南阿蘇村-82.4%49
35上天草市-82.4%118
36下益城郡美里町-82.5%21
37球磨郡あさぎり町-84.5%47
38上益城郡山都町-87.7%37
39球磨郡山江村-88.1%19
40球磨郡多良木町-88.9%21

上記はすべて熊本市中央区との比較で統計的に有意(p<0.001)です。

具体的に「延床120m²・土地200m²・築15年」で試算すると:

熊本市中央区
約4,741万円
八代市
約1,483万円
球磨郡多良木町
約524万円

熊本市中央区と球磨郡多良木町を比べると、同じ広さの家で9.0倍もの価格差がつきます。これまでのシリーズで最も大きな開きです。

熊本県の価格推移:戸建てはゆるやかな上昇、マンションはほぼ倍増

戸建て(県全体)は2018年頃からゆるやかな上昇に転じ、熊本市の中古マンションはより急な右肩上がりでした(いずれも2007年=100)。

90 120 150 180 210 2007 2010 2013 2016 2019 2022 2026 100 117.5 211.7
戸建て(県全体) — 2018年以降ゆるやかに上昇 中古マンション(熊本市5区) — 2014年以降、加速しながら右肩上がり

戸建て(県全体)は2007〜2017年頃までほぼ横ばいでしたが、2018年以降は統計的に有意な上昇に転じ、2026年は117.5(19年で+17.5%)。一方、熊本市の中古マンションは2014年以降ずっと有意な右肩上がりで、特に2019年以降は加速し、2026年には211.7とほぼ倍増(+111.7%)しています(年率換算で約4.1%)。上昇が加速し始めた時期は、TSMC(台湾積体電路製造)の熊本進出計画が具体化した時期とおおむね重なっており、関連需要が住宅市場にも波及した可能性がありますが、このデータだけで直接の因果関係を証明するものではありません。

データから分かったこと

菊池郡菊陽町の躍進は、熊本県の中でも際立った動きでした。TSMCの熊本工場(JASM)が立地する町として、2021年の進出発表以降、全国的に知名度が上がったエリアです。県庁所在地の中心区に次ぐ2位という結果は、実際の取引データにもその影響が表れていることを示しています。同じく工場に近い合志市(4位)・菊池郡大津町(7位)も上位に入っており、この一帯がまとまって上昇しているように見えます。

都市部と地方部の価格差は、これまでのシリーズで最大でした。熊本市中央区と球磨郡多良木町の価格差は9.0倍で、宮崎(5.6倍)を上回ります。県内の中でも人吉・球磨エリアなど山間部の価格水準は特に低く出ました。

マンション価格の上昇は、戸建てよりもはっきりと都市集中の影響を受けているようです。熊本市中心部への転入需要(半導体関連の雇用増を含む)がマンション価格を押し上げる一方、戸建てが主な選択肢になる郊外・地方部は緩やかな動きにとどまっている、という構図は鹿児島・宮崎で見た傾向とも共通しています。

FIRE目線で一言

POINT

戸建てで住宅費を抑えたいなら、球磨郡多良木町のような山間部は熊本市中央区の1割程度で家が持てます。ただし菊陽町周辺は工場関連の需要で今後も価格が動きやすいエリアである可能性があり、購入タイミングの見極めが今まで以上に重要になりそうです。

また、熊本市中心部のマンション市場は19年でほぼ倍増という長期的な値上がり傾向にあり、資産性を重視するなら参考になる材料です。ただし短期間で急伸した市場は反動リスクも相応にある点は留意しておきたいところです。

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この記事のデータについて
国土交通省「不動産情報ライブラリ」の実取引データのうち、戸建て(宅地(土地と建物))・中古マンション等の取引を対象に、面積・築年数・取引時期などの条件を揃えたうえで統計的に推定しています。市区町村別ランキングは戸建て・直近10年(2016年〜2026年、8,808件)を直近重視の重み付きで、価格推移は戸建て・2007年以降19年分(県全体、14,313件)とマンション・2007年以降19年分(熊本市5区限定、3,943件、マンション取引の97.6%が熊本市に集中しているため)を、それぞれ重み付けなしで算出しました(決定係数R²は戸建てランキング0.64、戸建て推移0.63、マンション推移0.77)。熊本市・八代市などの政令指定都市・大規模自治体は区単位でデータが記録されている場合、区を1つの単位としてランキングしています。

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