FIRE移住研究 第1回

東京都の住宅価格を調べてみた
— シリーズの比較基準点 —

今回から「FIRE移住研究」というシリーズを始めます。国内外のリゾート地・移住候補地の住宅価格を、実際の不動産取引データで1回1地域ずつ調べていきます。第1回は、これから見ていく各地域と比較するための基準点として、東京都を取り上げます。地方の価格がどれだけ「安い」のか、まずは東京の実際の水準を押さえておきます。

本記事は不動産情報ライブラリ(国土交通省)の公開データに基づく試算であり、投資助言や特定物件の推奨ではありません。想定条件を変えると結果は変わります。

結論

港区と千代田区が突出して高く、統計的にはほぼ同水準でした。最も手頃な青梅市とは8.4倍の価格差があり、これは23区・多摩地域を含めた東京都内だけの比較です。また、19年間の価格推移で見ると、東京都のマンション価格は2007年比で+143.8%(ほぼ2.4倍)に上昇しており、特に2020年以降の伸びが際立っています。

東京都 市区町村・区別 価格ランキング(ファミリータイプ・マンション)

同じ面積・築年数・間取りの物件で揃えて比較した場合の、区市ごとの価格差です(直近10年・135,019件の実取引データを回帰分析しました。基準=港区)。

-80% -60% -40% -20% 0% 港区(基準) 0.0% n=5,542 渋谷区 -8.2% n=2,788 新宿区 -30.0% n=4,095 世田谷区 -44.7% n=9,024 江東区 -51.4% n=11,740 練馬区 -61.3% n=5,425 板橋区 -63.2% n=5,749 江戸川区 -68.0% n=5,238 足立区 -72.2% n=5,841 八王子市 -80.7% n=4,289 青梅市 -88.1% n=772
港区より安い(統計的に有意、すべてp<0.001)
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順位区市価格水準n
1千代田区+1.8%1,087
2港区(基準)0.0%5,542
3渋谷区-8.2%2,788
4目黒区-26.1%2,792
5新宿区-30.0%4,095
6文京区-30.3%3,203
7中央区-30.6%5,159
8品川区-36.2%5,486
9豊島区-39.9%2,554
10世田谷区-44.7%9,024
11中野区-46.4%2,537
12杉並区-48.0%3,894
13台東区-49.0%2,700
14武蔵野市-49.5%1,334
15江東区-51.4%11,740
16大田区-55.7%6,496
17墨田区-55.8%3,306
18三鷹市-59.1%1,417
19北区-59.6%3,121
20練馬区-61.3%5,425
21荒川区-61.3%2,657
22小金井市-61.6%879
23狛江市-62.9%652
24板橋区-63.2%5,749
25国分寺市-65.3%945
26調布市-65.6%2,404
27国立市-67.1%664
28江戸川区-68.0%5,238
29葛飾区-70.1%3,824
30府中市-70.9%2,629
31足立区-72.2%5,841
32西東京市-72.4%1,593
33立川市-74.0%1,316
34小平市-76.0%1,117
35稲城市-78.1%867
36町田市-78.4%2,339
37多摩市-78.6%2,389
38東大和市-79.0%529
39日野市-79.1%1,077
40東村山市-79.1%1,066
41清瀬市-79.8%378
42東久留米市-79.9%710
43昭島市-80.1%886
44八王子市-80.7%4,289
45福生市-83.9%230
46あきる野市-84.2%22
47羽村市-86.0%203
48武蔵村山市-87.3%50
49青梅市-88.1%772
50その他(小規模自治体)-91.0%4

港区との価格差が統計的に有意なのは渋谷区以下です(千代田区は僅かに港区を上回りますが有意差なし、すべてp<0.001)。最下位の「その他」はn=4と極端に少数のため参考値としてご覧ください。

具体的に「3LDK・70m²・築15年」で試算すると:

港区
約19,992万円
世田谷区
約11,057万円
八王子市
約3,849万円

港区と最も手頃な青梅市(試算約2,379万円)を比べると、同じ広さのマンションで8.4倍もの価格差がつきます。これは東京都内だけの比較です。

東京都の価格推移:19年でほぼ2.4倍、しかも近年ほど加速

同じ条件の物件なら何年にどれだけの価格だったかを指数化しました(2007年=100、都内全域)。

100 150 200 250 300 2007 2010 2013 2016 2019 2022 2026 100 243.8
2008年以降ほぼ全期間で統計的に有意な上昇(p<0.01)

2007年を100とすると、2026年は243.8。19年でほぼ2.4倍(+143.8%)に上昇しています。特に2020年以降の伸びが際立っており、2020年の148.3から2026年の243.8まで、わずか6年で+64.4%という急ピッチな上昇でした。これまで見てきた沖縄(+196.8%)ほどではないものの、大分(+12.1%)や宮崎(+26.8%)とは比較にならないペースで、しかも19年間ほぼ一貫して右肩上がりという点が特徴的です。

データから分かったこと

港区と千代田区は、統計的にはほぼ同水準でした。千代田区は港区よりわずかに高い係数が出ましたが、統計的に有意な差ではありません。皇居周辺の希少な住宅地である千代田区と、六本木・麻布などの高級住宅街を抱える港区が、東京の住宅価格の頂点を分け合っている形です。

23区の中だけでも4倍以上の価格差がありました。渋谷区(港区比-8.2%)のような都心区に対し、足立区(-72.2%)のような周辺区は大きく手頃です。同じ「23区内」というくくりでも、実際の価格差はかなり大きいことが分かります。

多摩地域は23区よりさらに手頃で、選択肢の幅が広がります。八王子市・青梅市など多摩地域の主要都市は、23区の周辺区よりもさらに価格水準が下がります。ただし都心への通勤時間とのトレードオフがある点は、他地域への移住と同様に考慮が必要です。

FIRE目線で一言

POINT

東京都内でも、港区・千代田区のような都心部と多摩地域とでは8倍前後の価格差があります。「東京か地方か」だけでなく、「東京のどこか」という選択でも住宅費は大きく変わります。

次回以降の「FIRE移住研究」では、この東京の価格水準(たとえば港区の3LDK・70m²・築15年で約2億円)を一つの目安として、各地域の住宅価格を見ていきます。地方移住でどれだけ住宅費を圧縮できるのか、具体的な倍率で比較していく予定です。

次回は沖縄県を見てみます。
FIRE移住研究② を読む →

この記事のデータについて
国土交通省「不動産情報ライブラリ」の実取引データのうち、中古マンション等・ファミリータイプ(2LDK〜5LDK)取引を対象に、面積・築年数・間取り・取引時期などの条件を揃えたうえで統計的に推定しています。区市別ランキングは直近10年(2016年〜2026年、135,019件)を直近重視の重み付きで、価格推移は2007年以降19年分(都内全域、187,087件)を重み付けなしで、それぞれ算出しました(決定係数R²はランキング0.83、価格推移0.82)。

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